預金口座の調査(遺産分割協議や遺留分請求の準備)

遺産の調査

遺産分割協議や遺留分(コラム参照)の請求をする場合、最初に行うべきは、亡くなられた方の遺産を把握することです。

遺産を調査するうちに、プラスの財産よりも借金のほうが多いということが判明すれば、遺産分割協議や遺留分の請求どころではありません。相続放棄を検討しないといけなくなるかも知れません。相続放棄ということになれば、原則、相続開始を知った時から3か月以内に手続を行わなければなりません。(相続放棄についてのコラムを御参照ください。)

銀行の預金の調査

遺産の調査の中で、私がよく相談を受けるのは、銀行預金の調査です。

銀行により多少の実務の違いはありますが、銀行は、法定相続人から請求があった場合、残高の開示や、過去の取引明細書の開示に応じてくれます。過去何年分かというのは銀行によって違いはありますが、概ね、過去10年間分の取引明細書を開示してくれる銀行が多いように思います。

注意点

いくつか注意しないといけないことがあります。

  1. 基本、有料です。料金は銀行により異なります。取引明細書1年分あたり1万円近い手数料を請求する銀行もあります。したがって、事案に応じて、何年分の取引明細書を求めるかを検討したほうがいいでしょう。
  2. 開示にあたり、開示請求者は、法定相続人であることを証明する戸籍や住民票や印鑑証明書の提出を要求されます。銀行は、これらの資料を慎重に審査しますので、審査に2週間以上かかることが多いです。
  3. 被相続人が亡くなる前に解約された口座については、情報の開示を拒否する銀行が多いです。
  4. 法定相続人の一部の人に全財産を相続させるという遺言があった場合、銀行は、それ以外の法定相続人に対して、開示を拒否することがあります。その場合、拒否された法定相続人は、早急に、全財産を相続した相続人に対して遺留分の請求をすることにより、銀行口座に対する権利を取得することができます。そうすると、銀行は、開示に応じざるを得なくなります。(なお、平成31年に民法が改正され、遺留分の規定が大幅に変更されたことに伴い、この点の実務も今後変更になると思います。)

以上、相続人がご自分で銀行に情報の開示を求める手続について、一般的な説明をさせていただきました。銀行により手続は異なりますので、実際には、銀行の担当者の方と話をしながら、手続を進めることになろうと思います。